2026年1月13日
― 胃がんの抗がん剤の過去と未来について―
こんにちは、小林内科医院です。
当院では今後、胃カメラ(内視鏡検査)に特に力を入れていきたいと考えています。
理由はひとつです。
胃がんは、早く見つけられれば治る可能性が高く、
そして進行していても「諦める時代ではなくなった」病気だからです。
私はこれまで約20年にわたり、内科・消化器内科・腫瘍内科として、
多くの胃がん患者さんの診療に携わってきました。
今回は、胃がんの抗がん剤治療がどのように進化してきたのかを、
できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
胃がん治療の出発点
― TS-1+CDDPの時代 ―
少し前まで、
進行・再発胃がんの標準治療といえば、
TS-1(ティーエスワン)+CDDP(シスプラチン)
が、いわば「ファーストチョイス」でした。
この治療が確立された当時、
全生存期間(OS:全体としてどれくらい生きられるかの指標)は
約13か月。
決して悪い治療ではありませんでしたが、
点滴治療が必要
腎機能への影響
食欲不振や吐き気などの副作用
など、患者さんの負担は決して軽くありませんでした。
当時は、
ステージ4の胃がんでは「まずは1年を目標にしましょう」
とお話しすることが多かった時代です。
SOX療法へ
― 副作用を軽く、でも生存期間は… ―
その後、治療は次の段階へ進みます。
SOX療法(TS-1+オキサリプラチン)
シスプラチンに比べて、
腎機能への影響が少ない
外来治療が可能
高齢の方にも使いやすい
という利点があり、
次第にSOX療法が主流となっていきました。
ただし、正直なところ、
全生存期間そのものは大きく変わりませんでした。
「副作用は軽くなったけれど、
生きられる期間が劇的に延びたわけではない」
この時代が、しばらく続きました。
大きな転換点
― 免疫チェックポイント阻害薬の登場 ―
胃がん治療が大きく変わったのは、
免疫チェックポイント阻害薬が登場してからです。
代表的な薬が、
ニボルマブ
ペンブロリズマブ
です。
これらの薬は、
直接がん細胞を攻撃する従来の抗がん剤とは異なり、
患者さん自身の免疫の力を回復させて、がんを攻撃する治療です。
これが胃がん治療に導入されたことで、
治療の景色が一変しました。
「効く人には、しっかり効く」治療
免疫チェックポイント阻害薬は、
誰にでも同じように効くわけではありません
しかし、効いた場合は長期に病気を抑えられることがあります
これまでの抗がん剤では考えにくかった
長期生存例が、確実に増えてきました。
実際に、
ステージ4でも治療を続けながら日常生活を送れる
数年単位で病状をコントロールできる
そうした患者さんを、
私自身も何人も経験してきました。
ステージ4=1年、の時代は終わりつつあります
以前は、
「ステージ4です。まずは1年を目標にしましょう」
そうお話しせざるを得ない時代でした。
しかし現在は、
ステージ4でも「5年を目指せる時代」
に、確実に近づいています。
免疫チェックポイント阻害薬が加わったことで、
進行胃がんの全生存期間は20か月弱まで延びています。
数字だけを見ると「数か月」と感じるかもしれませんが、
その中身は大きく違います。
治療の選択肢が増えた
次の一手、さらに次の一手を考えられる
「治療が尽きた」という状況が減った
これは、患者さんにとって非常に大きな変化です。
CLDN18.2とゾルベツキシマブ
― さらに新しい選択肢へ ―
そして、2024年7月から新たに加わった選択肢が、
CLDN18.2(クローディン18.2)
を標的とした治療です。
胃がんの一部では、
がん細胞の表面にCLDN18.2という分子が発現しています。
このCLDN18.2が陽性の場合に使用できるのが、
ゾルベツキシマブという抗体薬です。
特徴としては、
CLDN18.2陽性という条件付き
化学療法との併用で効果が期待できる
「効く可能性のある人」が事前に分かる
という点があります。
すべての胃がんに使えるわけではありませんが、
「調べれば、新しい道が見つかる」時代になってきています。
遠隔転移があっても、諦めないでください
ここで、強くお伝えしたいことがあります。
遠隔転移があるからといって、
すぐに諦める必要はありません。
胃がん治療は、
抗がん剤
分子標的薬
免疫療法
を組み合わせながら、
一人ひとりに合わせた治療を考える時代になっています。
「治療がある」
「次の選択肢がある」
この事実を、ぜひ知っておいてください。
それでも、一番大切なのは「早期発見」
ここまで治療の進歩についてお話ししてきましたが、
やはり最後に強調したいのは、
一番大切なのは、早く見つけること
という点です
早期胃がんで見つかれば、
内視鏡治療で治癒できる
抗がん剤治療そのものが不要な場合もある
進行してから治療を頑張るより、
そもそも進行させないことが最善の治療です。
ピロリ菌陽性の方は、定期的な胃カメラを
特に、
ピロリ菌陽性
過去にピロリ菌に感染していた
という方は、
胃がんのリスクが高いことが分かっています。
そのため、
毎年
もしくは2年に1回
の胃カメラ検査が望ましいと考えられます。
小林内科医院では
当院では、
苦痛の少ない胃カメラ
これまでのがん診療経験を活かした視点
必要に応じた専門医療機関との連携
を大切にしながら診療を行っています。
胃がんは、見つけるタイミングで未来が変わる病気です。
そして、
たとえ進行していても、
**今は「戦える時代」**です。
不安なことがあれば、
どうぞお気軽にご相談ください。