2025年11月01日
インフルエンザがすでに流行っています
冬になると流行するインフルエンザ。
今年は例年よりも早く流行が来ており、当院でもインフルエンザの患者様が複数見られる季節になりました。
実は、古くから伝わる漢方薬の中にもこの感染症の初期に有効なものがあります。その代表格が「麻黄湯(まおうとう)」です。
麻黄湯とは
麻黄湯は、体の中にこもった風邪の熱を発散させ、ウイルスに立ち向かう力を助ける処方です。構成する生薬はたった4つと非常にシンプルですが、その組み合わせが絶妙です。
構成生薬
麻黄(まおう):発汗を促し、体内の熱を外へ出す。気道を広げ、咳や喘鳴をやわらげる。
桂枝(けいし):体を温め、血流を整える。発汗を穏やかにサポート。
杏仁(きょうにん):咳を鎮め、痰を出しやすくする。呼吸を楽にする。
甘草(かんぞう):全体のバランスを整え、炎症を抑える。
この4つの生薬が協力して、発熱や悪寒、関節痛などの「インフルエンザ初期症状」にピッタリの効果を発揮します。
麻黄湯とインフルエンザ
西洋医学では、インフルエンザに対してタミフルやゾフルーザなどの抗ウイルス薬が使われますが、発症から48時間以内でないと効果が限られます。
一方で麻黄湯は、発症のごく初期(ゾクゾクと寒気がして熱が上がり始めたころ)に用いることで、発汗を促して自然な治癒を助けます。特に、
悪寒・発熱が強い
汗が出ていない
筋肉痛・関節痛がある
といったケースで有効です。子供が高熱をきたし、顔を真っ赤にしているけど、汗が出てこなくて熱がこもっている、そんなイメージを浮かべていただけたらと思います。
実際に日本感染症学会の研究でも、麻黄湯がインフルエンザA型の症状を軽くし、発熱期間を短縮したという報告もあります。
抗ウイルス薬との併用も可能で、体力がある若年者~中年層には特に適しています。
注意点
ただし注意することがありまして、麻黄湯は体力のある人の「発汗を促す」処方のため、高齢者や脱水傾向の方、虚弱体質の方には向かないことがあります。あくまで若年層から中年層、体力がある患者様向けの漢方であることをご留意ください。
また、麻黄には交感神経を刺激する成分(エフェドリン)が含まれるため、高血圧・心疾患・甲状腺機能亢進症の方は注意が必要です。
まとめ
麻黄湯は、2000年以上前の中国で生まれた処方ながら、現代のインフルエンザにも通用する「古くて新しい薬」です。
発症の初期に使うことで、体が本来持っている免疫力を最大限に引き出し、回復を助けてくれます。