塩分は減らせば減らすほどいい?―「減塩」のちょうどよいところを考える|新百合ヶ丘の内科・消化器内科・漢方内科|小林内科医院|土日診療

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塩分は減らせば減らすほどいい?―「減塩」のちょうどよいところを考える

塩分は減らせば減らすほどいい?―「減塩」のちょうどよいところを考える|新百合ヶ丘の内科・消化器内科・漢方内科|小林内科医院|土日診療

2026年9月25日

こんにちは、小林内科医院です。

高血圧と診断されたとき、あるいは健康診断で血圧が高いと指摘されたとき、

「塩分を控えてくださいね」

と言われたことのある方は多いと思います。

高血圧の予防や治療において、減塩はとても大切です。塩分を摂りすぎると血圧が上がりやすくなり、脳卒中や心臓病などのリスクにもつながります。

日本人はもともと塩分摂取量が多い傾向がありますので、普段から塩分を意識することには大きな意味があります。

ところが、ここでひとつ疑問が出てきます。

「塩分は、少なければ少ないほど健康によいのでしょうか?」

1日10gより6gがよいのであれば、3g、2g、1gと減らしていけば、さらに健康になるのでしょうか。

実は、そう単純ではありません。

近年では、塩分の摂りすぎが問題である一方、極端な塩分制限についても慎重に考える必要があることがわかってきました。

今回は、あらためて「減塩」について考えてみたいと思います。

そもそも「塩分」と「ナトリウム」は同じもの?

食品表示を見ると、「食塩相当量」と書かれているものもあれば、「ナトリウム」と書かれているものもあります。

食塩は塩化ナトリウム(NaCl)です。

おおよその関係は、

食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×約2.5

となります。

逆に考えると、食塩の約40%がナトリウムです。

血圧や体液量との関係で特に重要なのが、このナトリウムです。

ただし、ナトリウムそのものが「悪いもの」なのではありません。

ナトリウムは体内の水分量を調節したり、神経や筋肉を正常に働かせたりするために必要不可欠な電解質です。

つまり問題なのは、ナトリウムそのものではなく、現代の食生活では必要以上に摂取しやすいことなのです。

なぜ塩分を摂りすぎると血圧が上がるの?

塩分を多く摂取すると、体内のナトリウム量が増えます。

すると体はナトリウム濃度を一定に保つため、水分を体内に保持しようとします。

簡単にいえば、

塩分をたくさん摂る
→体内に水分をため込む
→循環する血液量が増える
→血圧が上がりやすくなる

ということです。

もちろん、実際の血圧調節はもっと複雑です。

腎臓、血管、交感神経、さまざまなホルモンが関係していますし、塩分に対する血圧の反応にも個人差があります。

特に高齢者、高血圧の方、慢性腎臓病のある方などでは塩分の影響を受けやすいことがあります。

したがって、塩分の摂りすぎを避けることは、現在でも高血圧治療の基本です。

日本人はやはり塩分を摂りすぎている

今回の記事で誤解していただきたくないのは、

「極端な減塩には問題がある」=「減塩しなくてよい」

ではないということです。

普段の食生活では、自分ではそれほど塩を摂っていないつもりでも、知らないうちにかなりの量を摂取していることがあります。

醤油や味噌、漬物だけではありません。

ラーメンやうどんなどの麺類、パン、ハム、ソーセージ、練り物、惣菜、弁当、レトルト食品、インスタント食品などにも塩分は含まれています。

特に加工食品の場合、自分で塩を振ったという感覚がないため、塩分を摂っていることに気づきにくいのです。

ですから、多くの方にとってまず大切なのは、

「知らないうちに摂っている余分な塩分を減らす」

ということです。

では、塩分は少なければ少ないほどよい?

ここからが今回の本題です。

塩分摂取量と血圧には関係があり、塩分摂取量を減らすことで血圧が下がることは多くの研究で確認されています。

一方で、血圧という数字ではなく、心筋梗塞、脳卒中、心不全、死亡などの長期的な結果まで含めて考えると、少し複雑になります。

一部の観察研究では、塩分摂取量と心血管疾患との関係について、摂取量が非常に多い場合だけではなく、極端に少ない場合にもリスクが高くなる、いわゆるJ字型あるいはU字型の関係が報告されています。

ただし、この点については現在も議論があります。

塩分摂取量を正確に測定すること自体が難しいことや、病気になった結果として食事量や塩分摂取量が減っている可能性などもあります。

したがって、

「塩分が少ないと危険だから、むしろ塩をたくさん摂ったほうがよい」

という話ではありません。

大切なのは、

「塩分を摂りすぎないこと」と「極端に減らしすぎないこと」は両立する

という考え方です。

人間の体は「塩分を守る」ようにできている

なぜ塩分を極端に減らすことが問題になる可能性があるのでしょうか。

その理由を理解するためには、人間の体に備わっている仕組みを知る必要があります。

その代表が、

RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)

です。

塩分、つまりナトリウムの摂取量が大幅に減ると、体は、

「ナトリウムが足りなくなるかもしれない」

「循環する血液量が減るかもしれない」

と判断します。

すると腎臓からレニンが分泌され、RAA系が活性化し、ナトリウムや水分を体内に保持しようとします。

さらに交感神経も活性化します。

これは病気ではなく、私たちの体に備わった生存のための仕組みです。

人類の長い歴史では、現在のように塩分を簡単に摂取できる時代のほうがむしろ特殊でした。

そのため、人間の体にはナトリウムを失わないようにする仕組みが非常によく発達しています。

極端な塩分制限をすると、この防御反応が強く働く可能性があります。

「減らせば減らすほどよい」と単純には言えない理由のひとつです。

「1日6g未満」をどう考える?

高血圧の患者さんでは「食塩1日6g未満」という目標を聞いたことがあると思います。

高血圧の治療において減塩は非常に重要ですから、目標として意識することには意味があります。

ただし、

「昨日は7gだったから失敗」

「6gを少し超えたから体に悪い」

というように、数字だけに縛られる必要はありません。

家庭で毎日の塩分摂取量を正確に測定することも簡単ではありません。

それよりも、

自分が普段どこから塩分を摂っているのかを知り、余分な部分を減らしていく

ことが大切です。

また、高齢者では少し違った視点も必要になります。

減塩を意識しすぎて食事がおいしくなくなり、食欲そのものが低下してしまう方がいます。

食事量が減れば、エネルギーやたんぱく質の摂取量まで減少し、体重減少、筋肉量低下、フレイルやサルコペニアにつながることがあります。

塩分の数字を守るために、必要な栄養まで摂れなくなってしまっては本末転倒です。

年齢や病気、栄養状態を含めて考える必要があります。

心不全では「厳しく減塩すればよい」とも限らない

この問題が特にわかりやすいのが心不全です。

心不全では、心臓の働きが低下すると、腎臓は「体を循環する血液が足りない」と判断しやすくなります。

するとRAA系や交感神経系が活性化し、ナトリウムと水分を体内に保持しようとします。

その結果、むくみ、体重増加、息切れなどが起こります。

そのため、心不全では以前から塩分制限が重要とされてきました。

もちろん、塩分を大量に摂取すれば体液量が増え、心不全を悪化させる可能性がありますので、過剰摂取を避けることは大切です。

一方、近年では、

「心不全なら、塩分を限界まで減らしたほうがよいのか?」

については見直されています。

SODIUM-HF試験では、心不全患者さんを対象に食事性ナトリウムを厳しく制限する介入が検討されました。

その結果、死亡、心血管関連入院、救急受診を合わせた臨床イベントについて、厳格なナトリウム制限による明確な減少は示されませんでした。一方で、症状やQOLについては改善がみられた項目もありました。

つまり心不全でも、

「塩分を摂りすぎないこと」は重要ですが、「厳しく減らせば減らすほど予後が良くなる」とまでは言えない

ということです。

心不全では「入ってくる塩」だけでなく「出ていく塩」も考える

ここで少しだけ、利尿薬についてお話ししましょう。

心不全では、体内にたまった余分なナトリウムと水分を排泄するために利尿薬を使用します。

代表的なのが、フロセミド(ラシックス®)などのループ利尿薬です。

腎臓では、血液から1日におよそ180~200Lもの原尿がつくられます。

ところが実際に尿として排泄されるのは通常1~2L程度です。

つまり、濾過された水分のほとんどは腎臓の中で再吸収されています。

ナトリウムも同じです。

腎臓では、

近位尿細管
→ヘンレ係蹄
→遠位尿細管
→集合管

というさまざまな場所でナトリウムを再吸収しています。

フロセミドは、このうち主にヘンレ係蹄の太い上行脚でナトリウムの再吸収を抑えます。

ナトリウムが尿へ出ることで水分も一緒に排泄されるため、むくみや肺うっ血などを改善します。

ところが、人間の体は非常によくできています。

ひとつの場所でナトリウムの再吸収を抑えると、

「失われたナトリウムを別の場所で取り戻そう」

とする働きが強くなります。

長期間ループ利尿薬を使用していると、その先にある遠位尿細管などでナトリウムの再吸収が強くなることがあります。

さらにRAA系も活性化します。

その結果、

「以前はこの量でよく尿が出たのに、最近は効きにくい」

という状態になることがあります。

これを利尿薬抵抗性と呼びます。

利尿薬は「フロセミドを増やせばよい」だけではない

利尿薬抵抗性が起きた場合、単純にフロセミドを増量し続けるだけが治療ではありません。

そこで考えられるのが、

sequential nephron blockade(連続ネフロン遮断)

という考え方です。

名前は難しいですが、考え方はシンプルです。

腎臓では、ネフロンのさまざまな場所でナトリウムを再吸収しています。

そこで、

一か所だけを強く抑えるのではなく、異なる場所に作用する薬を組み合わせて、ナトリウムの再吸収を段階的に抑える

という方法です。

たとえば近位尿細管にはアセタゾラミドやSGLT2阻害薬、ヘンレ係蹄にはループ利尿薬、遠位尿細管にはサイアザイド系・類似利尿薬、さらに遠位側から集合管にかけてはMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)など、それぞれ異なる部位や機序に働く薬があります。

病状に応じてこれらを組み合わせることで、ループ利尿薬だけを増量するより効率よくナトリウムを排泄できる場合があります。

ただし、利尿作用を強めすぎれば、脱水、血圧低下、腎機能悪化、低ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症などが起こることがあります。

したがって、これは患者さん自身で薬を増減するという話ではありません。

体重、むくみ、血圧、尿量、腎機能、ナトリウム、カリウムなどを確認しながら我々医師が調整していく必要があります。

「塩を減らす」と「余分な塩を出す」

なぜ減塩の記事で利尿薬の話をしたのでしょうか。

それは、私たちの体のナトリウム量が、

「どのくらい口から入ってくるか」だけで決まるわけではない

からです。

食事から入ってくるナトリウムと、腎臓から排泄されるナトリウム。

そして、それを調節するRAA系、交感神経系、腎臓の働き。

これらのバランスによって体内のナトリウムや水分量は保たれています。

心不全の患者さんに、

「とにかく塩分を限界まで減らしてください」

というだけでは、十分ではありません。

もちろん過剰な塩分摂取は避けます。

しかし同時に、病状に応じて適切な利尿薬を使用し、余分なナトリウムと水分を排泄することも大切です。

だからといって、

「塩分をたくさん摂っても、利尿薬で出せばいい」

ということでもありません。

入ってくる塩分を適度に抑え、必要な栄養はしっかり摂り、余分にたまったナトリウムや水分は必要に応じて薬で調節する。

心不全では、このバランスが重要なのです。

減塩だけでなく「カリウム」にも目を向けてみる

そして、血圧を考えるうえではナトリウムだけでなく、カリウムも重要です。

カリウムには、ナトリウムの排泄を促す方向に働く作用があります。

野菜、果物、豆類、いも類などにはカリウムが比較的多く含まれています。

そのため健康的な食事を考えるときには、

「何を減らすか」だけでなく、「何をしっかり食べるか」

という視点も大切です。

ただし、腎機能が低下している方ではカリウムを十分に排泄できず、高カリウム血症になることがあります。

慢性腎臓病などでカリウム制限を指示されている方は、自己判断で果物や野菜を大量に摂取しないようにしてください。

食事療法も、一人ひとり違ってよいのです。

では、実際の食生活ではどうすればよい?

減塩というと、

「薄くておいしくない食事を我慢する」

というイメージを持つ方もいます。

しかし、毎日のことですから、我慢だけでは長続きしません。

まずは「余計な塩分」を減らしてみましょう。

料理を食べる前から醤油やソースをかけない。まず一口食べてから必要かどうか考える。

醤油は「かける」より「つける」。

麺類はスープを全部飲まない。

漬物や加工食品を毎食のように食べている方は、回数を少し減らしてみる。

惣菜や加工食品を購入するときには、栄養成分表示の「食塩相当量」を見てみる。

こうした小さな工夫でも、積み重ねれば塩分摂取量は変わります。

そして野菜や果物などを適切に取り入れ、食事全体のバランスを整えていきます。

「塩をゼロに近づける」のではなく、「余計な塩を減らす」。

このくらいの考え方のほうが、長く続けられるのではないでしょうか。

まとめ―減塩は「目的」ではありません

高血圧の予防や治療において、減塩は今でも非常に大切です。

特に普段から塩分摂取量が多い方、高血圧の方、心不全や慢性腎臓病のある方では、過剰な塩分摂取を見直す必要があります。

一方で、

「塩分は少なければ少ないほどよい」

と単純に考える必要もありません。

人間の体には、ナトリウムが不足するとRAA系や交感神経系を働かせてナトリウムと水分を守ろうとする仕組みがあります。

心不全でも、厳格な塩分制限がすべての患者さんの予後を改善するとは限りません。

また高齢者では、減塩を意識するあまり食欲が低下し、必要なエネルギーやたんぱく質まで不足してしまうことにも注意が必要です。

大切なのは、塩分の数字だけを見ることではありません。

血圧、年齢、心臓や腎臓の状態、体重、むくみ、栄養状態、使用している薬などを含めて考えることです。

摂りすぎない。
でも、必要以上に怖がらない。

そして、余分な塩分を減らしながら、必要な栄養はきちんと摂る。

これが現実的な「減塩」ではないかと思います。

減塩は、それ自体が目的ではありません。

血圧を整え、心臓や腎臓を守りながら、元気に生活していくための手段のひとつです。

数字だけにとらわれるのではなく、その方にとって無理なく続けられる食生活を一緒に考えていきましょう。

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