手足が冷たい、身体が冷える…冷え症のタイプ別に考える漢方治療|新百合ヶ丘の内科・消化器内科・漢方内科|小林内科医院|土日診療

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手足が冷たい、身体が冷える…冷え症のタイプ別に考える漢方治療

手足が冷たい、身体が冷える…冷え症のタイプ別に考える漢方治療|新百合ヶ丘の内科・消化器内科・漢方内科|小林内科医院|土日診療

2026年10月30日

~手足の冷え、冷えのぼせ、全身の冷え、お腹の冷え~

はじめに

秋が深まり、朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。これから冬に向かうにつれて、「手足が冷たくて眠れない」「靴下を重ねても足先が温まらない」「身体の芯から冷える」といった冷え症に悩む方も増えてきます。

冷え症は日常的によくみられる症状ですが、その現れ方は人によって大きく異なります。

例えば、手足の先だけが冷える方もいれば、身体全体が冷えて疲れやすい方もいます。また、足元は冷たいのに顔だけがほてる、いわゆる「冷えのぼせ」を訴える方も少なくありません。

西洋医学では、冷えには末梢血管の収縮や血流の変化、自律神経の働き、筋肉量、ホルモンなど、さまざまな要因が関係すると考えられています。

一方、漢方医学では、冷えを単に体温が低い状態として捉えるのではなく、身体全体のバランスが崩れた結果として考えます。

そのため、漢方治療では「冷える」という症状だけで処方を決めることはありません。

身体のどこが冷えるのか、どのような症状を伴うのか、体力や胃腸の状態はどうか。

こうした特徴を総合的に判断し、その方に合った漢方薬を選択していきます。

今回は冷え症を大きく4つのタイプに分け、それぞれに用いられる代表的な漢方薬と、その構成生薬について解説します。

1.漢方医学から考える冷え症の原因

漢方医学では、身体の状態を理解するために「気・血・水」という考え方を用います。

「気」は生命活動を支えるエネルギー、「血」は身体に栄養を与える働き、「水」は血液以外の体液や水分代謝に関係する概念です。

冷え症を考えるうえでは、特に「血虚(けっきょ)」「瘀血(おけつ)」「水滞(すいたい)」という病態が重要になります。

血虚とは、身体を養う「血」の働きが不足した状態です。手足の冷えに加えて、顔色の悪さ、皮膚の乾燥、疲れやすさ、めまい、月経不順などを伴うことがあります。なお、漢方医学の血虚は、西洋医学の貧血と同じ意味ではありません。

瘀血とは、血の巡りや働きが滞っている状態を指します。冷えのぼせ、肩こり、頭痛、月経痛、下腹部の圧痛などがみられることがあります。ただし、瘀血は必ずしも医学的に測定される血流障害を意味するものではありません。

水滞とは、身体の水分代謝が乱れ、余分な水分が偏って存在している状態です。むくみやめまい、身体の重だるさなどを伴うことがあります。

また、身体を温める働きが低下することによって、手足だけでなく全身が冷え、倦怠感や下痢などを伴うこともあります。

このように、冷え症といっても、その背景にある漢方医学的な状態はさまざまです。

2.手足の先が冷えるタイプ

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は、手足の冷えに加えて、めまい、むくみ、疲れやすさ、月経不順、月経痛などを伴う方に用いられる代表的な漢方薬です。

特に、比較的体力が弱く、漢方医学でいう「血虚」と「水滞」が重なっている方に適した処方です。

当帰芍薬散は、当帰、芍薬、川芎、茯苓、朮、沢瀉の6種類の生薬から構成されています。

当帰(とうき)は、血を補いながらその巡りを整える働きがあり、冷えや月経に関係する症状によく用いられます。芍薬(しゃくやく)は血を養い、筋肉の緊張や痛みを和らげる働きを持ちます。川芎(せんきゅう)は血の巡りを促す「活血」という働きがあり、当帰や芍薬と組み合わせることで、血を養いながらその巡りを整えます。

一方、茯苓(ぶくりょう)、朮(じゅつ)、沢瀉(たくしゃ)は、身体の余分な水分の偏りを改善する「利水」という働きを持ちます。茯苓と朮には胃腸の働きを支える役割もあります。

このように当帰芍薬散は、血を補って巡りを整える生薬と、水分代謝を改善する生薬を組み合わせた処方です。

単純に身体を温めるのではなく、血虚と水滞という身体のバランスの乱れを整えることで、冷え症の改善を目指すことが特徴です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、手足の先が強く冷え、しもやけや冷えに伴う痛みなどがみられる方に用いられる漢方薬です。

漢方医学では、血虚を背景として寒さの影響を受け、身体の末端まで温める働きが十分に届かない状態を考えます。

この処方には、当帰、芍薬、桂皮、細辛、木通、甘草、大棗、呉茱萸、生姜が含まれています。

当帰と芍薬が血を養い、桂皮(けいひ)は身体を温めて冷えに伴う症状を改善します。細辛(さいしん)も寒さによる冷えや痛みに用いられる生薬です。

さらに、呉茱萸(ごしゅゆ)と生姜(しょうきょう)が身体の内側を温め、冷えに伴う痛みや胃腸症状に働きかけます。木通(もくつう)は水分代謝を整えるとともに、漢方医学では経絡の通りをよくする働きがあると考えられています。甘草と大棗は、処方全体の働きを調和させる役割を担います。

当帰芍薬散が血虚と水滞を重視するのに対し、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、血虚を背景とした末端の強い冷えや、寒さに伴う痛みを重視する処方といえるでしょう。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

呉茱萸湯も身体を温める漢方薬ですが、手足の冷えそのものよりも、冷えを伴う頭痛や吐き気などに用いられることが多い処方です。

構成生薬は、呉茱萸、人参、生姜、大棗の4種類です。

呉茱萸は身体の内側を温め、冷えに伴う痛みや悪心を改善する働きがあります。生姜も胃腸を温め、吐き気を和らげる働きを持ちます。一方、人参(にんじん)は胃腸の働きを補い、大棗(たいそう)は胃腸を支えながら生薬全体の働きを調和させます。

特に、冷えやすく、頭痛とともに吐き気を伴う方では、呉茱萸湯が候補となります。

同じ呉茱萸を含む処方でも、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手足の強い冷えを重視するのに対し、呉茱萸湯は頭痛や胃腸症状を重視するという違いがあります。

3.足は冷たいのに顔がほてる「冷えのぼせ」タイプ

冷え症の中には、足先や下半身は冷たいのに、顔や頭は熱く感じる方がいます。

このような状態は「冷えのぼせ」と呼ばれ、漢方医学では瘀血などが関係している場合があります。

このタイプでは、単純に身体を温めるのではなく、血の巡りを整える「駆瘀血剤」が用いられることがあります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、代表的な駆瘀血剤です。

比較的体力があり、冷えのぼせに加えて、肩こり、頭痛、月経痛、下腹部の圧痛などを伴う方に用いられます。

構成生薬は、桂皮、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬の5種類です。

桂皮は身体を温め、気血の巡りを整える働きがあります。牡丹皮(ぼたんぴ)と桃仁(とうにん)は、血の滞りを改善する「活血化瘀」という働きを持ち、桂枝茯苓丸の中心的な役割を担っています。

また、芍薬は血を養いながら痛みを和らげ、茯苓は水分代謝を整えます。

桂枝茯苓丸の特徴は、単に身体を温めるのではなく、瘀血を改善することで冷えとほてりが混在する状態に働きかける点です。

温経湯(うんけいとう)

温経湯は、冷えに加えて、皮膚や唇の乾燥、月経不順、月経痛などを伴う方に用いられる漢方薬です。

漢方医学では、血虚と瘀血が重なり、さらに身体を温める働きも不足しているような状態を考えます。

温経湯は、当帰、芍薬、川芎、地黄、牡丹皮、呉茱萸、桂皮、人参、麦門冬、半夏、甘草、生姜の12種類の生薬から構成されています。

当帰、芍薬、川芎に加えて、地黄(じおう)が血を補い、身体を潤す働きを担います。牡丹皮は瘀血を改善し、呉茱萸、桂皮、生姜は身体を温めます。

さらに、麦門冬(ばくもんどう)は身体を潤し、乾燥を改善する働きを持ちます。半夏(はんげ)は胃腸の働きを整えて吐き気などを和らげ、人参と甘草は胃腸の機能を支えます。

このように温経湯は、血を補い、血の巡りを整え、身体を温めながら潤すという、多面的な働きを持つ処方です。

桂枝茯苓丸が瘀血を中心に考えるのに対し、温経湯は冷えとともに血虚や乾燥が目立つ方に適していることが特徴です。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

桃核承気湯も駆瘀血剤の一つですが、桂枝茯苓丸や温経湯とは異なる特徴があります。

比較的体力があり、冷えのぼせに加えて、便秘、下腹部の張りや圧痛、のぼせ、いらだちなどを伴う方に用いられます。

構成生薬は、桃仁、桂皮、大黄、芒硝、甘草の5種類です。

桃仁は血の滞りを改善する中心的な生薬で、桂皮は身体を温めながら気血の巡りを整えます。

一方、大黄(だいおう)と芒硝(ぼうしょう)には便通を促す作用があり、腸管内に停滞した便を排出する方向に働きます。甘草は処方全体の働きを調和させます。

つまり、桃核承気湯は、瘀血に加えて便秘や下腹部の症状が目立つ方に用いられる処方です。

同じ冷えのぼせでも、桂枝茯苓丸は瘀血、温経湯は血虚や乾燥を伴う瘀血、桃核承気湯は便秘を伴う瘀血というように、処方の選択が異なります。

なお、桃核承気湯には大黄と芒硝が含まれるため、下痢や腹痛などの副作用に注意が必要です。

4.身体全体が冷えるタイプ

真武湯(しんぶとう)

真武湯は、身体全体が冷え、疲れやすく、下痢、めまい、ふらつき、むくみなどを伴う方に用いられる代表的な漢方薬です。

漢方医学では、身体を温める働きが低下し、さらに水分代謝が乱れているような状態に用いられます。特に、体力が低下していて、身体の芯から冷えるような方に適した処方です。

真武湯は、附子、茯苓、芍薬、朮、生姜の5種類の生薬から構成されています。

中心となるのは附子(ぶし)です。附子はトリカブトの根を適切に加工した生薬で、漢方医学では身体を内側から強く温める働きがあると考えられています。

茯苓と朮は水分代謝を整え、身体に停滞した余分な水分の偏りを改善します。芍薬は筋肉の緊張や痛みを和らげ、生姜は胃腸を温める働きを持ちます。

このように真武湯は、身体を温めるとともに、水分代謝の乱れを整える処方です。

手足だけでなく、身体の芯から冷えるような方で、下痢やめまい、むくみなどを伴う場合に候補となります。

なお、附子は適切な加工と用量管理が必要な生薬です。動悸、しびれ、悪心などの中毒症状に注意し、医師の管理のもとで使用します。

真武湯と人参湯の併用について

身体全体の冷えが強く、胃腸の働きも低下している場合には、人参湯(にんじんとう)が候補となることもあります。

人参湯は、人参、乾姜、甘草、朮の4種類の生薬から構成されています。

人参は胃腸の働きを補い、乾姜(かんきょう)は生姜を乾燥させた生薬で、身体の内側、特に胃腸を温める働きがあります。朮は胃腸の働きと水分代謝を整え、甘草は胃腸を補いながら処方全体を調和させます。

真武湯が全身の冷えと水滞を重視するのに対し、人参湯は胃腸の冷えや機能低下を重視する処方です。

漢方の古典には、茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)という処方があります。茯苓四逆湯は、人参、甘草、乾姜、附子、茯苓から構成され、身体を温める働きが著しく衰えた状態に用いられてきました。

真武湯と人参湯を組み合わせると、附子、乾姜、人参、甘草、茯苓などが含まれるため、茯苓四逆湯と共通する生薬構成になります。

ただし、両者の併用が茯苓四逆湯と同じ処方になるわけではありません。生薬の種類や配合量が異なるため、適応も同一ではありません。

また、附子の安全性や甘草の重複による偽アルドステロン症などにも注意が必要であり、併用する場合には慎重な判断が求められます。

5.お腹が冷えて痛むタイプ

大建中湯(だいけんちゅうとう)

大建中湯は、お腹の冷えや腹痛、腹部膨満などに用いられる代表的な漢方薬です。

特に、お腹が冷えると痛くなる、温めると症状が和らぐ、腹部が張りやすいといった方で、漢方医学的な適応を考えることがあります。

大建中湯は、山椒、乾姜、人参、膠飴の4種類から構成されています。

山椒(さんしょう)は、身体の内側、特に胃腸を温め、冷えに伴う腹痛を和らげる働きがあります。乾姜も胃腸を温める生薬で、山椒と組み合わせることで、腹部の冷えに働きかけます。

人参は胃腸の働きを補い、消化吸収機能を支える役割を担います。また、膠飴(こうい)はデンプン由来の糖類を主成分とする生薬で、胃腸を補い、腹部の緊張や痛みを和らげる方向に働きます。

このように大建中湯は、胃腸を温める生薬と、胃腸の働きを補う生薬を組み合わせた処方です。

また、大建中湯は消化器領域でもよく知られており、腸管運動や腸管血流などに対する作用が研究されています。

ただし、腹痛や腹部膨満の原因はさまざまです。強い腹痛や嘔吐、排便・排ガスの停止などがある場合には、腸閉塞などの疾患を考慮し、適切な検査や治療を優先する必要があります。

6.冷え症の背景に病気が隠れていることも

冷え症は体質として捉えられることもありますが、病気が原因となっている場合もあります。

例えば、甲状腺機能低下症では、寒がり、疲労感、むくみ、便秘などがみられることがあります。

貧血では、冷えの自覚に加えて、動悸、息切れ、倦怠感などを伴う場合があります。

また、寒さによって手指が白色や紫色に変化する場合には、レイノー現象が疑われます。レイノー現象には、特別な基礎疾患を伴わないものと、膠原病などに関連して起こるものがあります。

さらに、足の冷えに加えて、歩行時のふくらはぎの痛みや足先の傷が治りにくいといった症状がある場合には、末梢動脈疾患などの血管の病気にも注意が必要です。

特に、突然片側の手足が冷たくなり、強い痛みや皮膚の色の変化、しびれなどを伴う場合には、緊急の診察が必要になることがあります。

冷え症の治療では、漢方医学的な体質を考えることも大切ですが、その前提として、治療が必要な病気が隠れていないかを確認することが重要です。

まとめ:冷え症は「どこが、どのように冷えるか」が大切です

冷え症といっても、その原因や症状の現れ方は人によって異なります。

手足の先が冷える場合には、血虚や寒さの影響を考え、当帰芍薬散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯などが候補になります。

足元は冷たいのに顔がほてる場合には、瘀血などが関係していることがあり、桂枝茯苓丸、温経湯、桃核承気湯などを使い分けます。

身体全体が冷え、疲れやすさや下痢、むくみなどを伴う場合には、身体を温める働きの低下や水滞を考え、真武湯などが候補になります。

また、お腹の冷えや腹痛、腹部膨満が中心であれば、大建中湯などを検討することがあります。

漢方薬は、単に身体を温めるための薬ではありません。

血を補う、血の巡りを整える、水分代謝を改善する、身体を内側から温める。

それぞれの生薬が持つ働きを組み合わせ、身体全体のバランスを整えることを目指します。

なお、漢方薬にも副作用や相互作用があり、妊娠中の使用に注意が必要な処方もあります。また、漢方医学的な適応があっても、すべての方に同じ効果が期待できるわけではありません。

冷え症に悩んでいる方は、単に「冷える」という症状だけでなく、冷える場所や時間帯、冷え以外の症状にも目を向けてみてください。

当院では、西洋医学的な診察や必要な検査を行いながら、漢方医学の視点も取り入れ、一人ひとりの体質や症状に合わせた治療を考えています。

冷え症でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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