2026年3月18日
苓桂朮甘湯・半夏白朮天麻湯・真武湯・五苓散の使い分け

こんにちは、小林内科医院です。
最近、「めまい」を訴える患者さんが増えています。
「ふわふわする」「クラッとする」「ぐるぐる回る」「雲の上を歩いているような感じ」など、症状の表現は人それぞれです。
一見するとすべて同じ“めまい”ですが、
実はその中身はまったく異なります。
そして漢方では、この違いを非常にシンプルに整理します。
👉 めまい=水の異常(=水毒)
これが基本の考え方です。
■ めまいの本質は“水のバランスの乱れ”
私たちの体は水でできています。
血液、リンパ液、細胞内外の水分、そして内耳のリンパ液。
これらの水が適切に巡ることで、体のバランスは保たれています。
しかし、
・水が余る
・水が停滞する
・水が必要な場所に届かない
このどれかが起きると、
👉 めまいが生じます。
特に重要なのが、内耳の水分バランスです。
ここが乱れると、回転性めまいが起こります。
また、血圧や自律神経と関わる水の動きが乱れると、
ふわふわするめまいや立ちくらみになります。
■ 水毒を見抜くポイントは「口渇」
ここは臨床でとても大切なポイントです。
👉 水毒なのに、実は「口渇」がヒントになることが多い
一見矛盾しているようですが、
・水が体内で偏っている
・血管内が相対的に不足している
・水がうまく使えていない
こうした状態では、
👉 体は「水が足りない」と感じて口渇が出ます。
つまり、
👉 「水が多い=水毒」でも、口渇は出る
ここを見逃すと、診断がズレます。
■ めまいは4つのタイプで考える
外来での印象として、めまいは大きく4つに分かれます。
① ふわふわ・立ちくらみ
② ぐるぐる回る
③ 雲の上を歩くような不安定感
④ 水が一気に偏るタイプ(急性)
それぞれに対応する漢方があります。
■ ① ふわふわ・立ちくらみ
― 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) ―
この処方は、
👉 起立性低血圧に非常によく使います。
◆ 症状
・立ち上がるとクラッとする
・ふわふわする
・朝に弱い
・低血圧気味
・顔色が白い
・動悸
👉 いわゆる“フクロウ型めまい”
◆ 病態
・気虚(エネルギー不足)
・脾虚(消化機能低下)
・水の吸収不良
👉 水はあるが、上に持ち上げられない状態
その結果、脳への血流が不足し、めまいが起きます。
◆ 生薬
・茯苓:利水
・桂枝:血流・自律神経
・朮:胃腸
・甘草:調和
👉 “気を補いながら水を動かす”処方
■ ② ぐるぐる回るめまい
― 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) ―
気虚がベースにあって、水分代謝異常が起き、余分な痰飲が頭部へ影響、ぐるぐる回るめまいを起こします
◆ 症状
・天井が回る
・吐き気
・頭重
・食欲不振
・雨の日に悪化
・疲れやすい
◆ 病態
・気虚(体力低下)
・脾虚(胃腸弱い)
・水毒(痰湿)
👉 “弱った体に水がたまって上に影響する”状態
◆ 生薬(主なもの)
・半夏:吐き気
・天麻:めまい
・白朮・蒼朮:水処理
・沢瀉:利水
・人参・黄耆:補気
・陳皮:気の巡り
👉 「補気+利水+めまい改善」
■ ③ 雲の上を歩くようなめまい
― 真武湯(しんぶとう) ―
これは非常に特徴的なめまいです。
◆ 症状
・足元が不安定
・ふわふわ続く
・雲の上を歩く感じ
・冷えが強い
・下痢
・倦怠感
◆ 病態
👉 「冷えによって水がさばけない状態」
体を温める力(陽気)が低下し、
水が停滞して全身のバランスが崩れます。
◆ 生薬
・附子:強力な温め
・茯苓:利水
・白朮:消化
・芍薬:調整
・生姜:温め
👉 「冷え+水毒」の代表処方
■ ④ 急性・水の偏りタイプ
― 五苓散(ごれいさん) ―
これもめまいで非常に重要な薬です。
◆ ポイント
👉 めまいにも使える利水薬
特に、
👉 回転性めまいに有効なことがある
◆ 症状
・急なめまい
・頭痛
・吐き気
・むくみ
・口渇があるのに水がたまる
◆ 病態
👉 水の分布異常
・消化管に水がたまる
・血中に戻らない
・内耳に影響
◆ 生薬
・沢瀉:利水の主役
・猪苓:排水
・茯苓:調整
・蒼朮:吸収
・桂枝:巡り
◆ 臨床のポイント
回転性めまいに対して、
👉 沢瀉湯の代わりに五苓散を倍量で使うこともある
これは実臨床でもよくある使い方で、
水の動きを強く整える目的です。
■ まとめ ― めまいは“水をどう扱うか”で決まる
めまいはすべて違うようでいて、
本質は共通しています。
👉 水のバランスの問題
そしてそれをどう崩しているかで、使う薬が変わります。
◆ 整理すると
・ふわふわ → 苓桂朮甘湯(起立性低血圧)
・ぐるぐる → 半夏白朮天麻湯(気虚+水毒)
・雲の上 → 真武湯(冷え+水毒)
・急性水毒 → 五苓散(分布異常)
■ 最後に
めまいはつらい症状ですが、
きちんとタイプを見極めることで改善が期待できます。
特に、
👉 「どんなめまいか」
👉 「口渇があるか」
👉 「冷えているか」
このあたりが重要なヒントになります。
「ただのめまい」と思わず、
体からのサインとして一緒に考えていきましょう。
どんな些細な症状でも構いません。
お気軽にご相談ください。