2026年6月28日
LDLコレステロールとスタチンについて考える
こんにちは、小林内科医院です。
健康診断で最も相談を受ける項目の一つが「コレステロール」です。
「LDLコレステロールが高いですね。」
「薬を飲んだ方がいいです。」
そう言われた経験がある方も多いでしょう。
最近ではインターネットやYouTubeなどで
「コレステロールは悪者じゃない」
「スタチンは飲まなくていい」
「薬は危険」
など、さまざまな情報があふれています。
患者さんからも
「先生、本当はどうなんですか?」
と聞かれることが少なくありません。
今日は現在わかっている医学的な事実をもとに、
・LDLとは何なのか
・本当に悪いものなのか
・薬は必要なのか
について、一緒に考えてみましょう。
LDLコレステロールとは何?
まず最初に知っていただきたいのは、
コレステロールは生命に必要不可欠な物質
ということです。
コレステロールは
・細胞膜
・女性ホルモン・男性ホルモン
・副腎ホルモン
・ビタミンD
・胆汁酸
などを作る材料になります。
つまり、
コレステロールがなければ人は生きていけません。
LDLは運び屋である
LDLはよく
「悪玉コレステロール」
と呼ばれています。
しかし実際には、
LDLはコレステロールそのものではありません。
肝臓で作られたコレステロールを全身へ届ける
宅配便のような役割
をしています。
つまり、
LDL自体は本来悪者ではありません。
なぜ悪玉と呼ばれるの?
では、なぜ悪玉と呼ばれるのでしょうか。
問題なのは、
傷ついたLDL
です。
血糖値が高い状態
喫煙
慢性炎症
腎臓病
肥満
ストレス
などが続くと、
LDLは酸化されたり糖化されたりします。
これを
修飾LDL
と呼びます。
修飾されたLDLは血管の壁へ入り込み、
マクロファージという免疫細胞に取り込まれ、
泡沫細胞となって動脈硬化を進めます。
つまり、
悪いのは
普通のLDLではなく、傷ついたLDL
なのです。
LDLが低ければ安心なの?
ここが少し難しいところです。
昔から
「LDLは低いほどいい」
と言われてきました。
確かに、
心筋梗塞や脳梗塞のリスクは下がります。
ところが、
疫学研究では
LDLが非常に低い人ほど死亡率が高い
というデータもあります。
「じゃあ低いのは危険なの?」
そういうわけではありません。
実は
高齢者
がん
感染症
栄養不足
慢性炎症
などでは、
体がコレステロールを十分作れなくなります。
つまり
病気だからLDLが低くなっている
ことがあるのです。
低いことが悪いのではなく、
低くなってしまう背景に病気が隠れている場合があります。
スタチンで下げたLDLは違う
ここは非常に重要です。
病気でLDLが低い人と、
スタチンでLDLを下げた人は
全く別です。
スタチンは
肝臓でコレステロールを作る量を減らします。
すると肝臓は
血液中のLDLを積極的に回収するようになります。
その結果、
血液中のLDLが下がります。
これは
病気で作れなくなる状態とは全く違います。
現在の研究では、
スタチンによってLDLをかなり低くしても、
大きな問題は少ないことがわかっています。
スタチンは本当に効く?
答えは
はい。
心筋梗塞や脳梗塞を減らす効果は間違いありません。
これは世界中で何十万人もの患者さんを対象とした研究で証明されています。
特に
・心筋梗塞を起こした人
・狭心症
・脳梗塞
・糖尿病
・慢性腎臓病
では、
スタチンによる利益は非常に大きくなります。
このような方では
LDLを積極的に下げることで
再発予防につながります。
では全員飲むべき?
答えは
いいえ。
ここが誤解されやすいところです。
例えば
30代
40代
病気なし
血圧正常
糖尿病なし
喫煙なし
という人なら、
LDLが少し高いだけで
すぐ薬になるとは限りません。
まず
食事
運動
減量
禁煙
十分な睡眠
が重要になります。
リスクが低い人では、
生活習慣だけで改善するケースも少なくありません。
高齢者では考え方が変わる
85歳以上になると、
話は少し変わります。
一次予防では
薬による利益より
副作用
筋肉の衰え
転倒
内服数の増加
などを考える必要があります。
そのため、
一人ひとりの健康状態を見ながら判断します。
年齢だけで決めるのではありません。
LDLだけ見てはいけない
最近注目されているのが
LDLの「量」だけではなく
「質」です。
糖尿病では
小さく密度の高いLDL
(small dense LDL)
が増えます。
これは酸化されやすく、
血管へ入り込みやすいことが知られています。
つまり
同じLDL120でも、
中身は人によって違う可能性があります。
だからこそ、
血糖
血圧
体重
運動
喫煙
睡眠
すべてが重要なのです。
食事で本当に改善できる?
もちろんです。
スタチンだけに頼る必要はありません。
おすすめなのは
・魚を増やす
・野菜を多く食べる
・豆類
・海藻
・オリーブオイル
・ナッツ
・適度な運動
これだけでも
LDLは改善します。
さらに
酸化LDLを減らす意味でも
禁煙
血糖コントロール
体重管理
十分な睡眠
は非常に重要です。
小林内科医院からお伝えしたいこと
コレステロールは悪者ではありません。
人間が生きていくために必要不可欠な物質です。
一方で、
傷ついたLDLは動脈硬化を進めます。
だからこそ、
すべての人が薬を飲むべきでも、
すべての人が薬をやめるべきでもありません。
大切なのは
「その人にとって本当に必要かどうか」を考えることです。
心筋梗塞を起こした方と、
健康診断で少しLDLが高かっただけの方では、
治療の考え方はまったく違います。
現在の医学では、
リスクが高い方ではスタチンによる治療が寿命や健康寿命を守ることがわかっています。
一方で、
リスクの低い方では生活習慣の改善を中心に経過を見ることも少なくありません。
「悪玉だから全部下げればいい」
「薬は絶対飲まない方がいい」
そのどちらも極端な考え方です。
患者さん一人ひとりの年齢、持病、生活習慣、将来のリスクを総合的に考えて治療を選択することが、最も大切だと私たちは考えています。
健康診断でコレステロールが高いと言われた方や、スタチンを飲むべきか迷っている方は、一人で悩まずお気軽にご相談ください。一緒にデータを確認しながら、ご自身に合った治療方針を考えていきましょう。