2026年7月16日
こんにちは、小林内科医院です。
健康診断で「尿酸値が高いですね」と言われたことはありませんか?
「まだ痛風になっていないから大丈夫。」
「痛くなったら病院へ行けばいい。」
そう考えている方は少なくありません。
実際、高尿酸血症は初期にはほとんど症状がありません。そのため、健康診断で指摘されても、そのまま放置されてしまうことが多い病気です。
しかし、高尿酸血症は単に「痛風になる病気」ではありません。
近年では、腎臓や血管への影響も注目され、高血圧や糖尿病、脂質異常症と並ぶ生活習慣病の一つとして考えられるようになっています。また、治療薬も進歩し、昔からある「コルヒチン」という薬が新しい役割で再び注目されるなど、治療の考え方も少しずつ変わってきています。
今回は、高尿酸血症や痛風について、最新の知見も交えながら分かりやすくお話ししたいと思います。
尿酸は悪者ではありません
「尿酸」と聞くと、「体に悪いもの」「早く下げた方がいいもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし実は、尿酸は私たちの体にとって必要な物質でもあります。
尿酸は細胞が毎日新しく生まれ変わる過程や、食事から摂ったプリン体が分解されることで自然に作られます。そして体の中では抗酸化物質として働き、細胞を酸化ストレスから守る役割も担っています。
つまり、尿酸は決して「悪者」ではありません。
問題になるのは、尿酸が増え過ぎてしまうことです。
人間は尿酸を分解する酵素(ウリカーゼ)を持っていないため、余分な尿酸は腎臓から尿として排泄するしかありません。
ところが、尿酸が作られ過ぎたり、腎臓から十分に排泄されなくなったりすると、血液中の尿酸が徐々に増えていきます。
高尿酸血症とは?
血液中の尿酸値が7.0mg/dL以上になると、高尿酸血症と診断されます。
日本では成人男性のおよそ4~5人に1人が高尿酸血症といわれており、とても身近な病気です。
女性は女性ホルモンの影響で若い頃は少ないものの、更年期以降は男性と同じように増えてきます。
多くの方は無症状です。
しかし症状がない間にも、血液中に溶けきれなくなった尿酸は小さな結晶となり、少しずつ関節や腎臓へ蓄積していきます。
そして、ある日突然その結晶に免疫細胞が反応すると、激しい炎症が起こります。
これが「痛風発作」です。
「風が吹いても痛い」痛風とは?
痛風は、突然足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、歩くことも難しいほどの激しい痛みを起こす病気です。
もちろん、親指だけではありません。
足首や足の甲、膝、手首、肘などに起こることもあります。
「昨日まで何ともなかったのに、朝起きたら歩けない。」
そんな発症の仕方も珍しくありません。
実は、痛みの原因は尿酸そのものではありません。
長年関節の中にたまっていた尿酸の結晶を、白血球が「異物」と判断して攻撃を始めることで、強い炎症が起こるのです。
また、発作中には尿酸値が一時的に下がることがあります。
そのため、採血で尿酸値が正常だからといって痛風を否定することはできません。
診断には症状や経過も非常に重要です。
放置するとどうなるのでしょう?
「痛風発作さえ起こらなければ大丈夫。」
そう思われるかもしれませんが、それだけではありません。
高尿酸血症が続くと、
・尿路結石
・腎機能の低下
・痛風結節
などが起こることがあります。
さらに、高血圧や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病を合併している方も少なくありません。
尿酸そのものが動脈硬化を直接引き起こすかどうかはまだ研究が続いていますが、高尿酸血症は生活習慣の乱れを反映する重要なサインであることは間違いありません。
健康診断で尿酸値を指摘されたら、「まだ痛くないから大丈夫」と考えるのではなく、一度生活習慣を見直すきっかけにしていただきたいと思います。
プリン体だけを気にしていませんか?
「尿酸が高いのでビールをやめました。」
「納豆は食べないようにしています。」
外来でもよく聞くお話です。
もちろん、プリン体を多く含む食品を食べ過ぎないことは大切です。
しかし、最近の研究では、プリン体だけを気にしていても十分ではないことが分かっています。
実は、高尿酸血症や痛風の最大の危険因子は肥満です。
BMIが25以上になると、痛風を発症するリスクは約2倍に上昇すると報告されています。
さらに、若い頃から体重が10kg以上増えた方では、痛風の発症リスクがさらに高くなることも分かっています。
つまり、尿酸値を改善するために最も重要なのは、「プリン体をゼロにすること」ではなく、適正体重を維持することなのです。
食事で本当に大切なこと
高尿酸血症と診断されると、「プリン体を控えましょう」と言われることがあります。
もちろん、プリン体を多く含む食品を毎日のように大量に食べることはおすすめできません。
代表的なものとしては、
・レバー
・白子
・あん肝
・魚卵
・干物
などがあります。
しかし、近年では「プリン体だけを気にする時代ではない」と考えられるようになっています。
実際には、食事から摂取するプリン体が尿酸値に与える影響はそれほど大きくありません。
それ以上に大切なのが、
・食べ過ぎないこと
・適正な体重を維持すること
・糖分の多い飲み物を控えること
・アルコールを飲み過ぎないこと
です。
つまり、「〇〇を食べてはいけない」というより、「食生活全体を見直す」ことが最も重要なのです。
甘いジュースは意外な落とし穴
プリン体ばかり気にして、見落とされやすいのが果糖です。
果糖は、
・炭酸飲料
・スポーツドリンク
・エナジードリンク
・加糖の缶コーヒー
・果汁飲料
などに多く含まれています。
果糖は体内で代謝される際に尿酸を作りやすくするため、毎日飲む習慣がある人では痛風の発症リスクが高くなることが知られています。
「プリン体ゼロ」と表示されている飲み物でも、糖分が多ければ安心とは言えません。
暑い季節にはスポーツドリンクを飲む機会も増えますが、日常の水分補給は水やお茶を基本にするとよいでしょう。
野菜は神経質にならなくても大丈夫
患者さんからよくいただく質問が、
「ほうれん草は食べてもいいですか?」
「納豆はダメですか?」
というものです。
確かに野菜や大豆製品にもプリン体は含まれています。
しかし、野菜に含まれるプリン体が痛風の原因になることはほとんどありません。
野菜には食物繊維やビタミンが豊富で、体重管理や生活習慣病の改善にも役立ちます。
納豆も健康によい食品ですので、極端に制限する必要はありません。
「バランス良く食べる」ことを意識しましょう。
牛乳やヨーグルトはむしろおすすめです
意外に思われるかもしれませんが、牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、痛風のリスクを下げることが報告されています。
乳製品には尿酸の排泄を助ける働きがあると考えられており、高尿酸血症の方にも積極的に取り入れていただきたい食品です。
もちろん、糖分が多く含まれた飲むヨーグルトなどは飲み過ぎに注意が必要ですが、無糖のヨーグルトや牛乳は毎日の食生活に取り入れやすいでしょう。
アルコールは「種類」より「量」が大切
「ビールだけやめれば大丈夫ですか?」
外来で最も多い質問の一つです。
確かにビールにはプリン体が含まれています。
しかし、実はアルコールはプリン体だけが問題ではありません。
アルコールそのものが尿酸を作りやすくし、さらに腎臓からの尿酸の排泄も妨げてしまいます。
つまり、
ビールでも、
日本酒でも、
焼酎でも、
ウイスキーでも、
飲み過ぎれば尿酸値は上がってしまいます。
目安となる純アルコール20gは、
・ビール500mL
・日本酒1合(180mL)
・焼酎100mL
・ワイン約200mL
程度です。
もちろん、お酒が好きな方に「絶対にやめましょう」とお話しするわけではありません。
量を減らし、休肝日を設けることが何よりも大切です。
水分補給は最も簡単な治療です
尿酸は尿として体の外へ排泄されます。
そのため、水分不足になると尿酸が濃くなり、痛風発作や尿路結石の原因になります。
特に夏場は汗をかきやすく、脱水になりやすいため注意が必要です。
目標は十分な尿量を保つことです。
一度に大量に飲む必要はありません。
こまめに水やお茶を飲む習慣をつけるだけでも、尿酸の排泄を助けることにつながります。
コーヒーやワインはどうでしょう?
「コーヒーは飲んでも大丈夫ですか?」
これもよくいただく質問です。
いくつかの研究では、コーヒーを飲む習慣のある人では痛風の発症が少ないことが報告されています。
また、少量のワインを飲む人でも同様の報告があります。
ただし、これは「痛風予防のためにコーヒーやワインを始めましょう」という意味ではありません。
すでに飲む習慣がある方は、適量であれば過度に心配する必要はない、と理解していただければ十分です。
尿酸値はどこまで下げればいいのでしょうか?
治療を始めた患者さんから、
「尿酸値は正常になればいいんですよね?」
と聞かれることがあります。
現在のガイドラインでは、尿酸値は6.0mg/dL未満を目標とすることが推奨されています。
これは、6mg/dLを下回ることで尿酸の結晶が少しずつ溶け始め、痛風発作を予防できるためです。
一方で、痛風結節がある方などでは、さらに5mg/dL未満を目標にする場合もあります。
ただし、最近では尿酸は抗酸化作用を持つ大切な物質でもあることが分かってきました。
そのため、「とにかく低ければ低いほど良い」というわけではありません。
現在のところは、6mg/dL未満を無理なく維持することが最も大切と考えられています。
尿酸を下げる薬は焦らず始めます
尿酸降下薬には、
・尿酸を作る量を減らす薬(フェブキソスタット、アロプリノールなど)
・尿酸を尿へ排泄しやすくする薬(ドチヌラド、ベンズブロマロンなど)
があります。
最近ではドチヌラドという新しい尿酸排泄促進薬も使用されるようになり、患者さんの体質や腎機能に合わせて薬を選択できる時代になりました。
ただし、尿酸は急激に下げると逆に痛風発作を起こしやすくなります。
そのため、薬は少量から開始し、尿酸値を確認しながらゆっくり増量していくことが大切です。
最近見直されている「コルヒチン」という薬
痛風の治療で昔から使われている薬にコルヒチンがあります。
以前は、「痛風発作が起きたら飲む薬」というイメージが強かったかもしれません。
もちろん現在でも、発作の初期に使用されることがありますが、近年では**「痛風発作を予防する薬」**としての役割が改めて注目されています。
なぜ尿酸を下げ始めると痛風発作が起こるのでしょう?
「薬を飲み始めたら、かえって痛風になってしまった。」
そんな経験をされた患者さんもいらっしゃいます。
これは薬が効いていないわけではありません。
尿酸降下薬によって血液中の尿酸値が下がると、長年関節にたまっていた尿酸の結晶が少しずつ溶け始めます。
その過程で結晶が動き、白血球が反応してしまうため、一時的に痛風発作が起こりやすくなるのです。
つまり、「尿酸が下がったから発作が起きた」のではなく、「治療が始まり、結晶が動き始めたサイン」と考えることができます。
だからこそ、尿酸降下薬は少量から始め、ゆっくり増量することが大切なのです。
コルヒチンカバーという考え方
最近のガイドラインでは、尿酸降下薬を開始するときに、少量のコルヒチン(通常0.5mg/日)を6〜9か月程度併用する方法が推奨されています。
これを**「コルヒチンカバー」**と呼びます。
コルヒチンを併用することで、治療開始直後に起こりやすい痛風発作を減らすことが期待できます。
もちろん、すべての患者さんに必要というわけではありません。
腎機能が低下している方や、ご高齢の方、クラリスロマイシンなど一部の抗菌薬や免疫抑制薬を服用している方では、副作用が強く出ることがあるため慎重な使用が必要です。
患者さん一人ひとりの状態に合わせて、安全性を考えながら治療を進めることが大切です。
コルヒチンは炎症を抑える薬でもあります
コルヒチンは単に「痛風の薬」というだけではありません。
痛風発作では、尿酸の結晶に反応した免疫細胞が強い炎症を起こします。
コルヒチンは、この炎症を引き起こす仕組みを抑えることで、発作を予防したり、症状を軽くしたりする働きがあります。
最近の研究では、この作用は痛風だけでなく、さまざまな炎症性疾患にも応用できる可能性があることが分かってきました。
心筋梗塞や脳卒中の予防でも注目されています
近年、世界中で話題になっているのが、低用量コルヒチンと心血管疾患の研究です。
心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化にも、「慢性的な炎症」が関わっていることが分かってきました。
そこで海外では、通常より少ない量のコルヒチンを長期間服用することで、
・心筋梗塞の再発
・脳卒中
・心血管イベント
を減らせる可能性が報告されています。
現在も多くの研究が進められており、循環器領域でも非常に注目されている薬の一つです。
ただし、日本では心筋梗塞や脳卒中の予防目的でコルヒチンを使用することは保険適応となっていません。
現時点では、高尿酸血症や痛風の治療として適切に使用することが基本になります。
「痛風になってから」ではなく、「痛風にならないため」の治療へ
以前は、「痛風発作が起きたら治療する」という考え方が一般的でした。
しかし現在は、
「痛風発作を起こさせない」
ことが治療の目標になっています。
そのためには、
・尿酸値を6.0mg/dL未満で維持すること
・生活習慣を整えること
・必要に応じて尿酸降下薬を使用すること
・治療開始時にはコルヒチンを適切に併用すること
が重要になります。
痛みがない時期こそ、将来の痛風発作を防ぐための大切な時間なのです。
今日からできる高尿酸血症対策
最後に、日頃から意識していただきたいポイントをまとめます。
✔ 適正体重を維持する
✔ 食べ過ぎを避ける
✔ 甘いジュースや清涼飲料水を控える
✔ アルコールは種類より量を意識する
✔ 水分をしっかり摂る
✔ ウォーキングなどの有酸素運動を続ける
✔ 健康診断で尿酸値を確認する
これらはどれも特別なことではありません。
毎日の小さな積み重ねが、将来の痛風発作だけでなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの予防にもつながります。
まとめ
高尿酸血症は、「痛風になる病気」というだけではありません。
腎臓や尿路結石、さらには生活習慣病とも深く関係しており、健康診断で尿酸値を指摘された時点で生活を見直すことが大切です。
最近では、尿酸降下薬の選択肢も増え、患者さん一人ひとりに合わせた治療ができるようになりました。また、コルヒチンを治療開始時に少量併用する「コルヒチンカバー」という考え方も広がり、以前よりも痛風発作を起こしにくい治療が可能になっています。
さらに、コルヒチンは痛風だけでなく、炎症を抑える薬として心血管疾患の分野でも研究が進められており、今後さらに活躍の場が広がる可能性があります。
とはいえ、最も大切なのは薬だけに頼ることではありません。
バランスの良い食事、適度な運動、体重管理、水分補給、そして必要に応じた適切な薬物療法。このすべてを組み合わせることで、高尿酸血症は十分にコントロールできる病気です。
健康診断で「尿酸値が高い」と言われた方や、痛風発作を経験したことがある方は、「まだ痛くないから」と放置せず、一度ご相談ください。
小林内科医院では、高尿酸血症や痛風の診療はもちろん、生活習慣の改善から最新の治療まで、一人ひとりに合わせたサポートを行っています。
早めの一歩が、将来の痛みや合併症を防ぐ大切な一歩になります。気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。